20歳になったばかりの頃、教習所に通っていたことがあります。もちろん、運転免許を取るのが目的でした。
入所に際して、簡単な適正検査のようなものを受けました。内容は、チェック・シートの質問に答えて、その他には四角い枠を時間内に鉛筆で塗りつぶしていくような、塗り絵のような不思議なものでした。
二日くらいして、教習所から電話があり、個人面接を受けることになりました。
「実は、あなたはギリギリのラインにいるんですが、どうしますか?」
えっ? どうしますかって、もちろん運転免許を取りますよ。
「相当、苦労されるかもしれません…」
大丈夫です、やります! 費用は一括で前払いします!
…と、意気込んだものの、第一段階ですでにつまづきました。どうも、足元にある3本のペダルのうち、どれがブレーキで、どれがアクセルで、もうひとつが何だったか忘れてしまうのです。
大体、僕は教習所に入るまで、シートベルトの着用の仕方がよくわかっていませんでした。人の車に乗せてもらうたびに、ベルトを体の前後にたすきがけのように回すだけで安心していたのです。良く考えたら、それではちっとも固定されていませんね…
それでも、大負けに負けてもらって、なんとか第一段階を突破。規定の時間をどうにかオーバーしなくてすみました。
つづく第二段階。ついつい混乱してしまうので、慎重に運転することを心がけるようにしていたら、教官に怒られました。
「すみません! 車は早く走る乗り物ですよ!」
いやあ、おっしゃるとおり。次の日からは、思い切ってどんどん飛ばすようになりました。調子が出てきたので、カーブをまがるときも速度を落とさずに走っていたら、さすがに本気で怒られてしまいました。
「早い早い! 私を殺す気ですか?」
それでも、めげずに予約を取って、通い続けました。実習は緊張するし、学科は目を閉じないようにするだけでも大変でした。入所の際に忠告を受けた理由が、だんだん判明してきました。
あるとき実習で、「ぴったり時速30キロ」で走るコースがありました。メーターをくい入るように見つめながら、なんとか走り抜けて、我ながら良くやったと少し満足したところ、またまた教官に怒鳴られました。
「あんた、何見て運転してんの? それ、タコメーターだよ!」
タコ・メーター!?!
どうやら僕は、スピード・メーターとタコ・メーターを逆に覚えていたのでした。今になって思えば、とんでもないスピードを出していたんでしょうね。
それが教習所の最後の日でした。それ以来、教習所に行こうとすると体調が悪くなってしまったのです。気がついたら半年の期限が切れてしまい、ただの一度も路上に出してもらうことなく、仮免を手にすることもなく出所したのです。
このタコ・メーターの話は、後に同じ教習所に通ったという人から聞かされました。どうやら、教習所の伝説になってしまったようです。
唐突にこんなお話をさせていただいたのは、仕事でショックなことがあって「うつ」になっていた友達が、このおめでたい話を聞いて久しぶりに大笑いしてくれたからです。本当に、涙を流して笑ってくれました。
頑張って教習所に通ったことが、20年も経ってようやく役に立ったようで、嬉しい出来事でした。
長年のトラウマも解消されつつあるようなので、僕もキャンペーンを実施しようかと思うのですが、どんなものでしょう?
すべての方に、絶え間なく愛と光が届きますように。
ジーニー
追伸 周囲の大反対にあったので、免許はやっぱり諦めます…